1. 風荷重について
  建築工でに採用されている風荷重は(社)仮設工業会「改訂 荷重に対する足場の安全技術指針」の規準による。これは再現期間12ヶ月であり観測資料は1978年から1996年のものである。2005年度9月の産業安全研究所の文献※では実測地が計算値うわまわっている。更に、統計では増々強風が吹く頻度が増えてきている。近年は、都心部においても観測記録で最大瞬間風速30m/sを超える強風が吹くようになっている。局部的にはこれ以上の強風が吹いていると思った方が良い。このため+αの対策が必要になってきている。基準風速をうわまわる事が想定される場合は、風荷重を低減するために外部養生を折りたためる施工管理体制を整えておく必要がある。また、「一般市街地」や「大都市市街地」の工事で瞬間風速分布係数を低く設定する場合は、近接高層建築物による影響を考慮して1.3倍しておく必要がある。
 災害事例を見ると「壁つなぎ」の不足が原因と思われる多い。メッシュシート養生の足場で壁つなぎ間隔が2スパン毎(3.6m間隔)の計画では問題がある。経済性を考慮して既往の経験で判断すると災害につながることになる。過去の経験+αが必要になる。
 ※足場の耐風安全性に関する研究 その5 AIJ近畿大会2005年9月

 

2. 足場の強度計算について
 足場の強度計算の内容は仮設工業会の「足場・型枠支保工設計指針」に記載されているが、足場本体については、足場自重+積載荷重による軸力と風荷重による曲げ応力を合成して安全性を確認し、壁つなぎについては建物構築の施工手順を考慮して間隔を算定する。また、壁つなぎを接続する埋設インサート及びコンクリート強度についても安全性を確認する必要がある。
 ところが、足場の軸力と壁つなぎ間隔のみを算定して届出を提出して受理されているケースが目立つ。このような事では災害は減らない。

 

3. 壁つなぎ間隔について
 RC造の場合の壁つなぎ間隔の算定は、足場が最上部床から片持ち状態になった場合についても確認する必要がある。階高3.0m程度の建物の場合の最上部床からの足場の片持ち長さは4.5m~5.0程度になる。このため、この足場を支持するためには全スパン(1.8m間隔)で壁つなぎを設置する必要がある。

 

4. 建枠とくさび緊結式足場について
 仮設工業会の「足場・型枠支保工設計指針」では、風荷重(水平荷重)にする建枠の強度計算は、建枠を剛体と考えて建枠の柱脚ジョイントの強度を確認している。くさび緊結式足場については記載されていない。くさび緊結式足場は、風荷重(水平荷重)に対しては支柱2本相当分の曲げ強度しか有していない。このため、メッシュシートを張った場合に高さ30m程度から支柱の強度が不足する場合が発生してくる。くさび緊結式足場のシステム承認は軸力についてのみで水平荷重に対しては実施していない。また、承認規準は45m以下となっている。

 

5. 手摺りの基準について
 手摺の規準については仮設工業会の「墜落防止設備等に関する技術基準」に示されており同じく仮設工業会の「計画作参画者研究テキスト」に同様の内容示されている。この内容が守られていない場合が見受けられる。改めて内容を確認しておく必要がある。

 

6. 価格表
 代表的な検討事例を表2.1に示す。
               表2.1        金額:円 消費税を除く

項目 内容 金額
足場支持片持ちスラブの安全性の検証 片持ちスラブ1面 120,000
ALC外部EV階段室足場の安全性の検証 1基 120,000
免震スベリ支承足場の安全性の検証 1棟 360,000
片持ちスラブ先端支持足場の安全性の検証 1タイプ 120,000
特殊吊治具の安全性の検証 1個 3DFEM解析 240,000
超高層飾梁支持ゴンドラの安全性の検証 1棟 FEM解析 600,000
くさび緊結式足場の安全性の検証 1面 3Dフレーム解析 480,000
衝突及び落下試験 動的解析によるシミュレーション 3,000,000
地震時の建物足場一体解析 時刻歴応答解析によるシミュレーション 6,000,000

 

7. 計算事例
 代表的な計算事例を以下に示す。